富士山麓には「富士五湖」が知られていますが、実はかつて「富士八湖」という呼称もありました。
この富士八湖には五つの有名な湖の他に、四尾連湖などの湖沼も含まれるとされてきました。本記事では最新の定義や江戸時代から続く歴史背景も交え、富士八湖と四尾連湖の関係をわかりやすく解説します。
また、富士講(江戸時代の富士山信仰)や現代の観光事情にも触れながら、富士八湖にまつわる最新事情についても解説していきます。
目次
富士八湖に四尾連湖は含まれる?
富士八湖の定義
富士八湖とは、富士山麓に点在する八つの湖沼群のことです。昔から富士講信徒によって信仰の対象とされ、河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖といった富士五湖に加え、明見湖・四尾連湖・須戸湖などを合わせた八つの湖が巡礼地とされていました。
現在では「富士五湖」という呼び名が一般的ですが、歴史的には五湖に三つの湖を加えた富士八湖が広く知られていました。
四尾連湖の位置づけ
四尾連湖(しびれこ)は山梨県市川三郷町にあり、標高約850mの山中湖です。周囲1.2kmほどの小さな湖で、流入・流出する河川がなく湖水は自然に保たれています。湖畔にはキャンプ場や山小屋も整備され、手つかずの自然を満喫できます。歴史的には富士八湖のひとつとして信仰対象とされてきました。
混同される理由
現代では「富士五湖」という呼び方が圧倒的に一般的なため、「富士八湖」という概念自体が混乱を招いています。名称に「八」が含まれることから、忍野八海(おしのはっかい)など他の富士山周辺の名称と混同される場合もあります。
また「富士八湖」というキーワードで検索しても情報が少ないため、どの湖が含まれるか判断しづらく、疑問が残りやすくなっています。
富士八湖とは何か?定義と構成

富士八湖を構成する湖
富士八湖(ふじはっこ)は富士山の麓にある八つの湖沼の総称です。河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖の富士五湖に加え、明見湖・四尾連湖・須戸湖(浮島沼)の八つが含まれます。なお、地域や資料によっては泉津湖や長峰池を含める場合もあり、時代によって一覧は多少異なることがあります。
「八」の意味と名称の由来
日本では古来より「八」という数字が末広がりで縁起が良いとされてきました。富士山信仰でも数「八」は重要視され、八つのものを巡る巡礼行事が多くありました。富士八湖の呼称もこうした背景を持ち、八つの湖沼をまとめることで神聖な印象をもたせています。
内八海と外八海
「内八海(ないはっかい)」とは富士講で巡礼対象とされた八つの湖沼を指し、上述の富士八湖の構成湖がこれに当たります。一方、富士山から離れた地域にある八つの湖沼を「外八海(そとはっかい)」と呼び、これは江戸時代に富士講の行事の一部として遠方の聖地を巡るときに使われる概念でした。外八海には相模・伊豆・上州など離れた場所の湖沼(芦ノ湖など)も含められ、富士山を遠景とする信仰地として巡拝されることがありました。
富士五湖と富士八湖の違い

呼称の違い
「富士五湖」は富士山を囲む5つの湖(河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖)の総称で、昭和時代に観光用語として定着しました。
一方「富士八湖」は富士講信仰に由来する呼び名で、現代では観光ガイドなどにもほとんど登場しません。
含まれる湖の違い
富士五湖には河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖の5つだけが含まれ、明見湖・四尾連湖・須戸湖は含まれません。
富士八湖ではこれら5湖に加えて明見湖・四尾連湖・須戸湖も含まれるため、名称どおり合計八つの湖沼がまとめられています。
| 項目 | 富士五湖 | 富士八湖 |
|---|---|---|
| 湖の数 | 5 | 8 |
| 含まれる湖 | 河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖 | 河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖 明見湖・四尾連湖・須戸湖(浮島沼) |
| 名称の由来 | 昭和時代に観光PRで名付けられた | 江戸時代の富士講信仰に由来 |
| 主な用途 | 観光名所 | 巡礼・信仰の対象 |
歴史的背景の違い
「富士五湖」という名称は1920年代に観光宣伝用に生まれた比較的新しい呼び方です。
これに対し「富士八湖」は江戸時代の富士講信仰の中で使われていた言葉で、歴史的・宗教的な背景があります。富士五湖は現在も世界遺産の構成資産として観光資源になっていますが、「富士八湖」という呼称は近年の案内ではほとんど耳にしません。
四尾連湖とは?伝説と特徴
四尾連湖の概要
四尾連湖(しびれこ)は市川三郷町にある高地の湖で、標高約850mの場所に位置します。周囲1.2kmほどの小さな湖で、流入・流出する河川がないため湧水で水位が保たれています。湖畔にはキャンプ場や山小屋が整備され、手つかずの自然に囲まれた静かな環境が特徴です。歴史的には富士八湖の一つとされ、富士講の信仰対象でもありました。
伝説と名前の由来
四尾連湖はかつて「志比礼湖」や「神秘麗湖」と書かれましたが、湖に四本の尾をもつ龍神が住むという伝説から「四尾連湖」という表記が定着しました。江戸時代には雨乞いの地としても崇められ、干ばつ時に湖畔で祈願すると雨が降るという言い伝えがあります。
また、昔、干ばつが続いた際に湖に棲む怪物の牛を二人の侍が退治するとすぐに大雨が降ったという伝説も伝わっています。こうした伝承から、湖畔では牛の骨を沈めて雨乞いを祈願する習俗が続いてきました。
自然と見どころ
四尾連湖は周囲を山林に囲まれた静かな高地の湖です。春は桜、秋は紅葉と四季折々の自然美にあふれ、湖面に映る山々の景色が魅力です。
湖畔にはカヌーや手漕ぎボートの貸し出しがあり、家族連れでレジャーを楽しむことができます。
自然環境は豊かで、カワセミやフクロウ、タヌキなど様々な動物が生息しています。周遊歩道や湖畔のキャンプ場からは、日中だけでなく夜の満天の星空も堪能できます。
アクセス・周辺情報
四尾連湖へのアクセスはやや不便です。最寄り駅はJR身延線の市川大門駅または市川本町駅で、湖畔までは車で約30分かかります。
路線バスは本数が非常に少ないため、自家用車での来訪が一般的です。駐車場は整備されていますが、台数が限られている点に注意してください。
湖畔には山小屋(宿泊施設)やキャンプ場も整備されており、宿泊を伴うアウトドアも楽しめます。特に夏は家族連れで賑わいます。湖の背後にそびえる蛭ヶ岳に登ると、山頂から富士山と四尾連湖の絶景を望むことができます。
富士八湖の歴史と信仰

富士講と八海巡り
富士講の信徒は富士登拝の前に禊(みそぎ)の意味で周辺の霊場を巡りました。そのひとつに「内八海巡り」があり、富士八湖の八つの湖沼を順に巡礼する修行が行われました。富士山頂の八つの峰を巡る「お鉢巡り」や、五合目付近を巡る「御中道巡り」とともに、湖沼を巡る行程も信仰の一部に組み込まれていました。
「八」という数字の意味
古来日本では「八」は末広がりを意味し、縁起の良い数字と考えられてきました。また仏教における八正道など、八には宗教的にも特別な意味があります。富士山信仰においても八つのものを巡ることが重視され、「内八海」「外八海」「忍野八海」など八にこだわった巡礼習慣が生まれました。
古来からの伝説と信仰
富士山周辺には古くから多くの伝説が残っています。忍野八海や各湖沼にも龍神伝説や雨乞い伝承があり、四尾連湖もその一部でした。こうした伝承の中で富士八湖も信仰の場として大切にされ、富士山信仰全体の霊場の一角を成してきました。現在でも地元ではこれらの故事が語り継がれ、湖を囲む自然とともに尊ばれています。
まとめ
結論として、四尾連湖は歴史的に富士八湖に含まれる湖でした。江戸時代の富士講では五湖に明見湖・四尾連湖・須戸湖を加えた八つの湖沼が巡礼地とされており、四尾連湖もその一部です。
しかし現在では「富士五湖」という呼び名が一般化しているため、通常は河口湖・山中湖・西湖・精進湖・本栖湖の五つのみを指します。このように富士五湖と富士八湖の定義の違いが混乱を生んでいることが、包含の解釈のギャップにつながっています。
現在、「富士八湖」という言葉はあまり使われていませんが、四尾連湖自体は豊かな自然に恵まれた貴重な観光地です。本記事で紹介した歴史や伝説を踏まえ、八湖の一つであった古来の信仰にも思いを馳せつつ、富士山麓の湖めぐりを楽しんでいただければ幸いです。
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